Et★Toiのフランス的日々[L'art de Vivre]

フランスの映画、音楽等のエッセイ/植物を主体とした造形作品・商品企画、及びフランスの伝統色

フランス映画と音楽(2023.11)

5月コンサートのフランス映画等(&音楽)

   フランス映画と、そこで使用される音楽等をコレクションし、5月のコンサートでは、10曲位の歌唱とピアノ曲をお届けしたが、その中で知られた映画作品について、ご紹介する。

パリの空の下セーヌは流れる(1951年)

 アコーディオン伴奏が似合う、有名なタイトル曲だが、この作品は最後に痛ましい殺人事件となってしまう(ネタバレ)のが切ない。

赤い風車(1952年)

 画家T.ロートレックの人生を描いた英米映画。G.オーリックの音楽で「ムーランルージュの歌」は有名曲で、よく取り上げられている。映画では英語の詩で歌われている。

鬼火(1963年)やショコラ(2000年)

 ルイ・マル監督作品の「鬼火」の主演のモーリス・ロネは当時のイケメン系の男優の一人の様。この男優について言えば、「鬼火」は自死だが、なぜか「死刑台のエレベーター」、「太陽がいっぱい」でも殺人との関係が深い。エリック・サティのアンニュイな2曲が、退廃的な映画のイメージに合っている。

 「ショコラ」の方でもサティが使われているが、ジョニー・デップの「マイナースイング」の曲の方がサントラ盤にも取り入れられ、目立っている。

[*ルイ・マル監督の作品では、 「死刑台のエレベーター」も、マイルス・デイビスの音楽と、アンニュイなジャンヌ・モローの存在で、作品が引き締まっている様に思う。]

夜霧の恋人達(1968年)

 F.トリュフォー作品の中でも、大ヒットの「大人はわかってくれない」で始まるアントワ―ヌ・ドワネルシリーズの中では中盤の作品。タバール夫人役のD.セイリグの出演によって、華やかさが出ている貴重な作品。音楽は、C.トレネのシャンソン残されし恋には(I wish you love)」が冒頭から流れてくる。

ロバと王女(1970年)

 ジャック・ドミとミシェル・ルグランのコンビのミュージカル映画の中では、「シェルブールの雨傘」や「ロシュフォールの恋人達」に比べると、日本ではあまり知られてないが、フランスではヒット作品だったらしい。

[*フランス女優の美の頂点にあったカトリーヌ・ドヌーブの輝きが絶好調の時期だった様だが・・。現在も活躍中の彼女は別人格の様に観ている。最近の作品では、「いつもきれいと言われる」の定番のセリフが、ギャグっぽくて興味深い。]

主婦マリーがしたこと(1988年)

 当時は違法とされていたが隣の奥さんの堕胎を手伝った主婦マリーは裕福になるが、夫の密告によって絞首刑になるというえぐい作品。C.シャブロルらしい辛口な作品の一つ。歌うことが好きだったマリーがレッスンで、E.ショーソン「リラの咲くころ」を歌うシーンを発見した。(*難しい歌曲だけど、この歌唱は気に入っている。)

[*夫役のF.クリュゼは「最強の二人」で知られるが、同じシャブロルの作品「愛の地獄」も、なかなか良かった。主演・助演にかかわらず、一度観た俳優や女優の他の作品を観て楽しむのも、映画狂にとっての醍醐味といえる。]

エディット・ピアフ〜愛の讃歌〜(2007年)

 シャネル等と同様に、伝記ものでもあり今世紀のフランス映画の代表作だと思う。

当然ピアフの曲は沢山使用されているが、主演のマリオン・コティヤールシャンソンが好きな人の様。

◆映画と音楽シリーズ - 11.赤い風車(Moulin Rouge)

◆作品概要

1889年にモンマルトルにオープンした赤い風車が屋根の上にあるキャバレー「ムーラン・ルージュ」を拠点に活躍し、踊り子たちをモデルに数々のポスターを手掛けたことでも知られる、19世紀末のフランスの貴族出身の画家ロートレックの生涯を描いている。

 

 

★足に障害をもった“小さき男”と呼ばれたロートレックは、娼婦、歌手、ダンサー等と親交を持つ。恋人のマリーは、M.ユトリロの母で画家になったS.ヴァラドンのことで、彼女は、複数の画家のモデルをしていた。

★同じ様な作品では、E.ピアフも登場する『フレンチ・カンカン』等がある。

 

♭音楽について:

ムーラン・ルージュの歌」は、G.オーリックの作品にジャック・ラリューの仏語の歌詞がついたが、映画ではW.エンヴィックの英詩が使用され“Where is your heart”と題されて挿入されている。

 

 

 

◆映画と音楽シリーズ - 10.主婦マリーがしたこと(Une affaire de femmes )

◆作品概要:

第二次世界大戦中、ナチ占領下のノルマンディで子育てしながら夫の帰りを待つ主婦マリーが、当時は違法とされていたが、隣の奥さんの堕胎を手伝ったのがきっかけで、貧乏から脱却し、マリーは収入を得て生活力を付け裕福になった。娼婦リュシーの愛人を自分の愛人にし楽しんでしたが、ひもの夫ポールは筆跡を残さない様にしてマリーを密告し、結果マリーは死刑を宣告された。★マリーは歌う事が好きで、歌手になりたいという願望があり、歌のレッスンを受けていたが・・・。

 

★決して特別美しくはなく、可愛いタイプの女優ではないが、ユペールのえぐい演技が光っている。

★『ピアニスト』(2001年)も彼女らしい、えぐみのある映画。

★F.クリュゼも、『最強のふたり』等で、多種の作品に出演している。

 

♭音楽について:

・歌のレッスンで、ショーソン「リラの咲く頃」を歌っている。

・I.ユペールの母親がピアニストだった様で、音楽に関係する作品への出演は偶然ではない様だ・・。

 

 

◆映画と音楽シリーズ - 9. 夜霧の恋人たち(Baisers volés)

◆作品概要:

 素行不良から陸軍に入るが兵役不適格者として除隊、ホテルの夜間フロント、探偵事務所、他人に嫌われているという妄想に悩まされた靴店の主人タバール氏の依頼で店員に化けて従業員を調査するが・・。依頼人の妻タバール夫人と恋に落ちる。職を転々とするアントワ―ヌは、修理人になる。

 『アントワーヌ・ドワネルの冒険』シリーズのNo.3作。代表的なNo.1の作品『大人は判ってくれない』と違い軽快なコメディ作品。

 

★JP.レオが演じるドワネルは、1作目で、どうしようもないませがきで不良であり、このシリーズは、監督のF.トルフォーの自伝とも言われる。

★映画評論もしていた文学青年F.トリュフォーは、映画の芸術性を高めたヌーヴェルヴァーグの旗手で、2022年は生誕90年だった。『緑色の部屋』以外は鑑賞している。出演していた『未知との遭遇』も・・。

♭音楽について

映画の原題である『Baisers volés』は、劇中最後に挿入されるシャルル・トレネの「Que Reste-T-Il-De Nos Amours?」(残されし恋には)の一節が使われている。

 

 

 

◆映画と音楽シリーズ - 8. ロバと王女(Peau d'Âne)

 

◆作品概要:

王は、王妃の遺言で、王妃と同等の美貌と美徳を兼ね備えた女性としか結婚しないと誓った。亡き王妃との約束を守るためには娘である王女と結婚するしかないという結論に至る。王女は名付け親のリラの妖精の助言を受け、無理難題を王に突き付けるが・・

。近親婚を避けるため、王女はロバの皮を身にまとって王国を脱出する。ある国の王子が森小屋にいる王女に恋し、恋の病にかかった王子は、病床から「ロバの皮」に自分が健康を取り戻せるよう、お菓子を作ってくれるよう頼む。王女はケーキの中に自分の指輪を入れて焼く・・。王子は、その指輪がぴったりと合う女性と結婚すると宣言する。

 

★日本では知られてない作品だが、フランスではJ.ドゥミ作品で最もヒットした。ドヌーヴは、ジャック・ペランとはロシュフールの恋人達でもコンビを組んでいる。

♭音楽について

J.ドゥミとM.ルグランのコンビ作品の一つ。下線部分を歌った曲「愛のケーキのレシピ」は、小気味良く楽しい楽曲。

 

 



◆映画と音楽シリーズ - 7. 愛すれど哀しく(BUBU)

◆作品概要:

ミラノの純真な洗濯女ベルタはパン職人のブブに恋し、父の反対を押し切りブブの元へ行くが、ブブは働く事が嫌いでベルタを娼婦として働かせヒモに甘んじる。ベルタはピッコロという田舎から出てきた青年と知り合い、お互い惹かれるが・・・。ベルタは性病になり仕事もできなくなり苦悩の日々を送る。★最後は、自分を救える唯一のやさしいピッコロを頼るが、直ぐにブブに見つかり、元の生活に戻される。

 

★主役はタイトルロールではなくカンツオーネ歌手のマッシモ・・の方だった。

★負の連鎖が止まらない映画。パリではなくミラノが舞台。自然主義の文豪のE.ゾラ原作の『居酒屋』(1956年 R.クレマン)は、主人公が洗濯女だったが、同じような負の連鎖の物語。

★この俳優・女優のコンビでは、『わが青春のフロレンス』の方が名画。

 

 

◆映画と音楽シリーズ - 6.キングス&クイーン(Rois et Reine)

◆作品概要:

 一組の自由奔放な男女とその周辺を描く2部構成のドラマ。パリで画廊を営むノラは、死別した恋人(正式でない夫)との間の子供エリアスを父親のところに預けていたが、父親がガンで余命幾ばくも無いことを知る。そこで、ノラは1年前まで同棲していた恋人イスマエルに、懐いていたエリアスを養子にしてもらおうと頼みに行く。

 ヴィオラ奏者のイスマエルも自信家の為、同僚に嫌われ、精神病院に入院させられるが、そこで知り合った中国語ができる女性と恋に落ちる。

 ノラも無事結婚に漕ぎついたが、亡くなった父が残した、娘に対する憎悪の手紙は尋常なものではなかった。最後のシーンで、癖のある2名の男女とエリアスは幸せそうな表情を見せる。

 

★この監督の作品は難解。M.アマルリックも活躍中で、バルバラ(元妻がバルバラを演じる)等監督作品も多い。ピアノを弾くシーン等もあり、音楽への嗜好が強そう。

★E.ドゥボスも高評価される女優だが、マイペースでストイックな役がよさそう。「パリの調香師 しあわせの香りを探して」は適役。

 

♭音楽について:

  子供と会うシーンで、M.ラヴェル「亡き王女の為のパヴァ―ヌ」が使われるが、最初と最後では、H.マンシーニムーンリバー」が使われている。