*1:Michel Piccoli
F.トリュフォー映画の音楽_作曲家_ジョルジュ・ドルリュー
3/10&12 映画音楽の作曲家ドルリューの命日と誕生日に合わせ、昨年投稿したものをピックアップしました。
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ジョルジュ・ドルリュー(Georges Delerue, 1925.3.12 – 1992.3.10)は、フランスの作曲家で、主にF.トリュフォー(1932-1984)の主要な映画の音楽を担当した。
パリ音楽院でアンリ・ビュッセルらに師事し1949年音楽院卒、ローマ大賞で第2等に選ばれている。作曲した映画数は250本を超えるという。
1959年にアラン・レネの映画『二十四時間の情事』で初めて映画音楽の作曲をし、F.トリュフォーとは『ピアニストを撃て』以降、多数の作品でコンビを組んだ。
昨年ディスクユニオンのシネマ館で、トリュフォーの映画音楽集のCDの存在を知り、こういう音楽の聴き方もあると思い感心を持った。
若い頃にヌーベルヴァーグやポーランド映画等を、映画好きでもなかったが、知合いにつれられ入った映画研究会の合宿等で勉強したので、『アメリカの夜』、『隣の女』は鑑賞したが細かい事はあまり記憶していない。フランス好きとしては、好きなM.デュラス原作の映画は大体見ている。
トリュフォーの作品もレンタルや手ごろな入手は難しいが、このところ音楽&オペラ鑑賞を優先していたが、今回はドルリューが音楽を担当した作品をレンタルし6か月ぶりに映画鑑賞にも復帰した。
★ 映画音楽の場合、それ自体は前面に出ないので、オーリック同様、作曲家の作品自体に興味を持たれる事は少ないだろうが、クラシック音楽のピースも使用しているので、音楽のみに絞り聴いてみるのも悪くないが、当然映画は観ておきたい。★今回は映画自体についてもコメントした。
■トリュフォーの映画
- 「ピアニストを撃て(Tirez sur le pianiste )」(1960)
主演は歌手のC.アズナヴールでアルメニアのピアニスト役を演じている。アズナヴールが最後に出演した映画のバルザック原作『ゴリオ爺さん』(2004)も鑑賞したので、余計親しみがわいた。モノクロなので雪のシーンはきれいだった。音楽もクラシック曲や、正当防衛の殺人事故がテーマのスリリングな曲で構成されている。
- 「私のように美しい娘(Une belle fille comme moi)」(1972)
犯罪女性のカミーユの事を調査していた社会学者が多数の遍歴のある男性のうちの一人をカミーユが殺した罪を押し付けられた。共著の書籍で有名になり歌手になったカミーユのどこまでもしたたかな存在を受け入れる軽快なコメディに仕上がっているが・・。
個人的にはシャンソンの「J‘attendrai(待ちましょう)」が挿入されるのが気になる。社会学者の秘書の女性は服役中の氏を待っているのだろうか、意味深い。このタイトルの命名も不思議。アメリカ映画を見ている様だったがこのシャンソンで一気にフランス的。
- 「映画に愛をこめて アメリカの夜(La Nuit américaine)」 (1973)
トリュフォーの代表作でもあり映画もGrandiosoな感じで曲もクラシカルできっちりまとまっている。“アメリカの夜”とは夜のシーンを昼間に撮る「擬似夜景」の映画技法の事で、映画撮影自体がテーマの作品でトリュフォーも監督役で出演している。演出において、これまでの映画制作で得た発見を活かした、新しいアプローチがまさにヌーベルヴァーグの醍醐味といえる。
- 「逃げ去る恋(L'Amour en fuite)」(1978)
トリュフォーといえば「大人は判ってくれない」が出世作で、監督自身の人生を演じる主役のアントワーヌ・ドワネル(ジャン・ピエール・レオ主演)の5本の連作の最後の作品。過去の作品が、この映画に適宜挿入されるのも興味深い。
- 「終電車(Le Dernier metro)」(1980)
タイトル曲はシャンソンの「サンジャンの私の恋人」で好きな曲の一つだが、作品のテーマが暗く、ドヌーヴやドパルデューの名俳優の起用のわりにピンとこなかった。
・「隣の女(La Femme d'à côté)」(1981)
- 「日曜日が待ち遠しい!(Vivement dimanche!)」(1982)
主演はジャン=ルイ・トランティニャンとファニー・アルダンで殺人事件をコミカルに演出した作品。F.アルダンの最近の作品を2作位見たが「隣の女」の主演でもあったが記憶してない。プライベートではトリュフォーと結婚し監督とは死別している。この頃の作品は、宝塚の男役の様で、フランスでは珍しくダンディな女優で相当かっこよく気に入った。
タイトル名は映画の本筋ではないが、主役のバルバラが週末に練習しているユゴーの戯曲のセリフの一つの様。
■原作がマルグリット・デュラスの映画
・ヒロシマモナムール(旧題:二十四時間の情事)(Hiroshima mon amour)」(1959):アラン・レネ
- 「かくも長き不在(Une aussi longue absence )」(1961):アンリ・コルピ
主人公の女性がゆくえ不明の夫に似た記憶喪失の男性をおっかけ自分の店に招き確かめる・・という件。(主演女優のアリダ・ヴァリはヴィスコンティの『夏の嵐』(1954)の作品で、かなり美しい印象があったが・・。)タイトル曲はドルリュー作曲コルビ作詞の「Trois petites notes de musique」はコラ・ヴォケールが歌う甘やかでおとなしいシャンソン。劇中では、オペラ等のクラシック音楽を店の蓄音機で聴き話題にするシーンも印象深い。
■その他の映画
- 「軽蔑(Le Mépris)」(1963):J=L.ゴダール
昔はゴダールの方がトリュフォーよりクール(かっこよい)と思っていたが、『勝手にしあがれ』以外は興味がわかない。B.バルドーや故M.ピコリの若き日の存在を知った。
クラシカルな音楽もなかなか素敵。
・「わが命つきるとも(A Man for All Seasons)」 (1966):F.ジンネマン
・暗殺の森 Il (Conformista )」(1970):B.ベルトルッチ
タイトルの通り「小さな恋のメロディ」の様なアメリカ作品だが、謎の老人役にローレンス・オリビエが出演しているのが興味深い。音楽ではヴィヴァルディのリュート協奏曲をモチーフとし、第52回アカデミー賞のオリジナル作曲賞を受賞している。
- 最後に:
まだ見てないトリュフォー作品も、継続して鑑賞したい。フランス映画を特集する2000年頃の雑誌に取り上げた映画は、だいたい今回鑑賞できた。新たに気に入った俳優等の作品で、仏語のヒアリング力もアップしたい。
トリュフォーの作品は多彩で天才ぶりが良く分かったが、早く逝去したのが残念。
フランスの雑貨とフラワースタイリング[フランスの伝統色]
今年は、ますますフランス映画通(Cinéphile)へ!
3年前頃から、フランス文学原作の映画を中心に、約500本位の映画を集中して鑑賞してきた。その中でも、南仏の同郷のセザンヌの友人のエミール・ゾラを知り、その関係で画家のマネ等にも興味をもった。
若い時は、ゴダールには興味があったが、今はトリュフォーの映画の方がわかりやすく、昔見た記憶のある映画も、改めて見ている。
ベスト20位の映画に順位をつけるのは難しいので、●●フランスっぽいモノクロのクールな映画、●興味のある女優や俳優や人気シャンソン歌手を知った映画、ロマン・デュリスの作品の中でも際立った作品、▲▲しなやかなジェラール・フィリップ、アネークエメ、アルレッティ、エマニュエル・リヴァが登場する捨てがたい作品、▲大女優の存在感のある映画等で選んでみた。
★これから映画の事にも、踏み込んだ鑑賞ができればと思う。登場するシャンソンやクラシックの曲についても、調べてみたい。
●●ゾラの生涯(The Life of Emile Zola、1937)ウィリアム・ディターレ(米)
●●嘆きのテレーズ(Thérèse Raquin、1953)マルセル・カルネ
●●大人は判ってくれない(Les Quatre Cents Coups、1959)F.トリュフォー
●●勝手にしやがれ(À bout de souffle、1960)JL・ゴダール
●●雨のしのび逢い(Moderato cantabile、1960)ピーター・ブルック(英)
●欲望の曖昧な対象(Cet obscur objet du désir、1977)ルイス・ブニュエル
●ニキータ(Nikita、1990)リュック・ベッソン
●戦場のピアニスト(The Pianist、2002)ロマン・ポランスキー
●ある秘密(Un secret,、2007)クロード・ミレール
●タイピスト(Populaire、2012)レジス・ロワンサル
▲▲天井桟敷の人々(Les enfants du Paradis、1945)マルセル・カルネ
▲▲居酒屋(Gervaise、1956)ルネクレマン
▲▲モンパルナスの灯(Les amants de Montparnasse、1958)ジャック・ベッケル
▲▲死刑台のエレベーター(Ascenseur pour l'échafaud、1958)ルイ・マル
▲▲24時間の情事/ヒロシマ・モナムール(Hiroshima mon amour、1959) アラン・レネ
▲獅子座(Le Signe du lion、1959)エリック・ロメール
▲さよならをもう一度(Aimez-vous Brahms?、1961)アナトール・リトヴァク
▲昼顔(Belle de jour、1967) ルイス・ブニュエル
▲田舎の日曜日(Un dimanche à la campagne、1984)ベルトラン・タヴェルニエ
▲ポンヌフの恋人(Les Amants du Pont-Neuf、1991)レオス・カラックス
おいしいボタニカルアートを観て、写真も撮影・・
開催日翌日の11月6日に、英国キュー王立植物園の、野菜、くだもの、嗜好品等のアート作品を鑑賞した。
【「おいしい」ボタニカル・アート展】 | SOMPO美術館 (sompo-museum.org)
撮影許可ゾーンでは、W.フッカー等の作品を撮影できた。
ボタニカルアートを勉強して1年がたち、自分の好きな植物を描きながら、日々歓びを感じている。ホルベインの水彩絵の具では、黄みのサップグリーンと青みのフーカスグリーンを使っているが、この画家からとった色材とのことで、私はこのグリーンが好き。
当時の食卓を模したコーナーでは、先日、制作した絵画風のフラワーアレンジで使用した、アーティチョーク等の素材がおかれていて、親しみがわいた。
ジョルジュ・オーリック
ジョルジュ・オーリック(Georges Auric, 1899.2.15 – 1983.7.23)は、「フランス六人組」の一人で、映画音楽の大家として知られ、特に『赤い風車(ムーラン・ルージュ)』の主題歌で知られている。批評家としての活動もしていた様。
南仏エロー県(旧ラングドック)のロデーヴ出身。20歳になる前に、いくつかの舞台公演のために機会音楽(芸術ではなく実用音楽)を作曲し管弦楽法を施した。
パリ音楽院に在学中の1920年に、サティやコクトーを庇護者とする「フランス六人組」に参加した。
コクトーが1930年代初頭に動画の制作に取りかかると、映画音楽の作曲を始める。フランス、イギリス及びアメリカの映画に多くの楽曲を提供し、大家として大成功を収めた。
代表的な映画音楽を、以下に挙げる。
オーリックは、コクトーの規定した「六人組」の理念を映画音楽に持ち込み、単純明快で屈託のない表現と、はっきりと民謡を連想させる旋律やリズム、生命力あふれるオーケストレーションが特徴。1962年に映画音楽の作曲をやめ、パリ・オペラ座等の音楽監督に就任した。
■代表的な映画音楽
約130の映画音楽の作品を残しているという。詩人の血(1930年)、美女と野獣(1946年)、オルフェ(1949年)、夜ごとの美女(1952年)、赤い風車(ムーラン・ルージュ)(1952年)、ローマの休日(1953年)、ノートルダムのせむし男(1956年)、居酒屋(1956年)、悲しみよこんにちは(1957年)、恋ひとすじに(1958年)、オルフェの遺言(1960年)、クレーヴの奥方(1961年)、さよならをもう一度(1961年)等がある。
■おもな映画と音楽
(1)「赤い風車(Moulin Rouge)」
タイトルはパリにあるキャバレーの名前で、赤い風車が建物の外にあり恋を取り持つ風車といったところ。映画はこの店に通い詰めていた画家ロートレックのことを描いている。J.ヒューストン監督のイギリス映画で歌の歌詞は作詞家ジャック・ラリューがつけている。
(2)「居酒屋(Gervaise)」
あまりメジャーな映画ではないが、一昨年前半に仏映画を中心に映画鑑賞に集中していた頃、この映画が原作者のE.ゾラに感心を持つきっかけになった。主人公のGervaiseは、劇中のパーティの場で、けなげな様子で歌を歌っている。
(3)「恋ひとすじに」
ロミーシュナイダー主演で、アランドロンが初出演した記念すべき映画。
(4)「さよならをもう一度」
I.バーグマン、Y.モンタン、A.パーキンスと豪華なキャストのフランス・アメリカ合作映画で、原作はF.サガン「ブラームスはお好き(Aimez-vous Brahms? )」。ブラームスの交響曲第3番第3楽章(ポコ・アレグレット)の甘美なメロディが様々にアレンジされている。★ジャズ鑑賞時代に、ヘレンメリルが、歌詞のあるこの曲を歌っていたCDを見つけ、“いつか歌いたい”と思っていた事等、なつかしい。(YouTubeで聴けるが、さすがに本家イヴモンタンの演奏の方が魅力的。)
(5)「クレーヴの奥方」
同名の原作はラファイエット夫人が書いた17世紀末の古い仏文学。映画のメディアを探し、やっとキアラ・マストロヤンニ主演の現代演出の作品をゲットし鑑賞できたが・・。(それ以前に、ドラノア監督&コクトー脚本の作品があった。日本でも1988年には初公開された様だが、生憎メディアはない。)
■管弦楽の曲
オーボエ・クラリネット・ファゴットのための、「木管三重奏(trio)」(1938)という演奏会の作品があり、演奏される事がある。レヴァンフランセ等が演奏している。
■歌曲
歌曲も残しているが、Céline Ricciという米国SFで活躍する歌手のCDに、「コクトーの8つの詩」による曲集の演奏が入っている。CDはソーゲやミヨーの作品もあるが、オーリックの歌の部分の存在感が大きい。私も楽譜を海外からゲットし、1曲目の“Hommage à Erik. Satie”を歌おうと少し準備していた。詩は、画家のローランサンやルソーへのオマージュもあり、当時の音楽や絵画等の芸術家達の交流の軌跡がわかる。
- 余談!:この歌曲のCDの最後で、E.ソーゲの「旅芸人の径(le Chemin des Forains)」というバレエ音楽の歌を聴き、なじみ深い曲だったが、ピアフのシャンソンでもあった。(まだまだ知らない事が多い⇒だからいろいろ探したくなるのかな?!)